とりあえず、あんまり筋はわからないように抽象的に書きたいと思います。
 作品中で表現方法の実験が行われているように感じました。まず視点の使い方。このアフターダークでは読者である私たちの視点が複数の主人公の様子を観察するという形をとっているようです。その観察は執拗で、作品を映画にできるほど細かく情景描写します。においや感触までわかるのが、映画との違いか。そして、それが読者の視点であるということを時折強調します。次に時間の流れ方。とってもゆっくりです。ぶっちゃけていうと、読者にあわせているのではないかと思いました。どちらの表現方法もとても極端なように感じられました。だからこそ、わたしは実験的な作品だと言いたいわけです。
 感じ方と言うのは人それぞれですが、もともと描写に重要性を感じない私は、読者視点の描写を読んでいたら細かすぎて頭が疲れました。描写が多いと物語の進行自体はゆっくりになるので、時々せっかちな気持ちになりました。しかし、読み手に自分の立場をしらせるような小説は、わたし自身も書いてみたかったので、それをきれいに実行に移せる村上さんは、やはり文才が秀でているんだなぁと感心しました。時間の使い方に関しては、やっぱりゆっくりなので、読んでいる途中で「この話はこのページ数で完結するのかね」と疑問に思いました。
 内容に触れようかと思いましたが、やっぱり伏せていないネタばれは良くないのでやめました。感想だけ書かせていただくと、今回感じた教訓(に見えるもの)はありがちーにみえて、私にとって新鮮さを欠いたものでした。そして、かけあいや雰囲気は村上さんぽくて楽しめましたが、内容の起承転結は流されているように思えます。あと、ある人物にかんしてはもっと視点をむけて欲しかったです。文句ばかり書いているように見えますが、やっぱり雰囲気や会話が魅力的なので十分楽しめたのですよ。私が小説にとって大事と考えるのは、テーマ云々よりも、文章の読みやすさと読者を引き込む力です。読んでて楽しければそれで良しということです。
 しかし、教訓も含めて考えるならば、私が村上さんの作品で今のところ一番優れていると考えるのはやっぱり「神の子どもたちはみな踊る」です。読んでない人はよみましょう!